拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



獅貴の背後からそっと現れた律。律にも大きな怪我は無い。強いて言えば、拳の甲が傷付いて血が出ているだけだ。そういえば、皆同じところを怪我している。



「紫苑…よかった…」



私の手をギュッと握って、律はふにゃりと微笑む。かと思うと禅くんの方を睨んで「…無能が」と低く呟いていた。



「あ"ぁ?なんだコイツ、礼儀がなってねぇ―――」


「落ち着け禅!礼儀がなってないのはお互い様だろ!!」



拳を鳴らして律に近付く禅くん。それを必死に止める涼くん。あれ、陽葵どこだ?と、涼くんの肩に担がれていない小さな体を探してきょろきょろする。


あ、いた。普通に立ってる。未星くんに横から抱き着いてぐわんぐわんしてる。未星くんの目が据わって少し不憫だ。たぶん陽葵のことだから「おなかすいたー」とか言って暴れてるんだろう。




「―――…ねぇ、そろそろ良い?」


「………!!」




背後から聞こえた声に一斉に振り返った。どこか不機嫌で苛立ちの篭ったその声には、心当たりがある。



「日下くん…」



顔に浮かんでいるのは、いつもの王子様スマイルでは無かった。にこやかなオーラも纏っておらず、ただ不愉快だという感情を抑えることなく、私たちを睨んでいる。


けどその方がいい。笑顔を向けられてももう返す気は起きない。禅くんにあんな仕打ちをした奴だ。大声で「大嫌い」だと叫びたい。そんな子供みたいなこと出来ないが。