拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



何があったの、そう聞く前に陽葵の口が僅かに開いた。私は最期の遺言を聞くかの如く、陽葵の声に耳を澄ます。



「…おなかが、すいて…ちからが…でない…」


「………」



大変だ。無敵モードが解除されている。これはどうすればいいんだ、取り敢えずアンパンでも食わせておくべきか…?


ぐるぐると考え込んでいると、獅貴が私を抱く手を強めた。モゾモゾ動いて、頬を擦り寄らせてくる。なんだか擽ったいな…触れる部分も心も。なるべく自然に感じるように、そっと体を離した。



「紫苑っ…」


「…獅貴?」



私が離れたことで我に返ったのか、獅貴は私の肩を両手でグイッと掴んで顔を近付けてくる。いやそれにしても近いな…近すぎる…。



「紫苑…良かった…怪我は無いな…?」



うん…と頷くと、ほっとした顔で微笑む獅貴。視界の端で、何故か涼くんが大袈裟なほど安堵した表情をしていた。そんなに私の無事を願ってくれていたのだろうか、嬉しいな。


一応周囲を見渡して確認するが、いつものメンバーは皆元気そうだ。誰も大怪我をしていなくて良かった。族だからめちゃくちゃ喧嘩してるのかと思ってたけど、そうでも無いのかな、みんな無事だし。



「……紫苑…」


「…律?」