拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「だからほら、早く行こうぜ。な?」



肩をポンッと叩いて先を促す。シキは何の反応も返さなかったが、無表情ながらも前に進み出したので話は聞いているようだ。


シキを不安げに見る理史に苦笑する。お前も行くぞと陽葵を回収して、シキを追うために動き出した時。背後から荒々しい足音が近付いてきた。シキもピタリと立ち止まって振り返る。


そこに現れたのは。



「……律?」



はぁはぁ…と息を切らして膝に手をつく律。額から汗を流して鋭く此方を睨んだ律は、俺や理史には目もくれず、一直線にシキの方へドスドスと歩み寄る。



「―――…っは!?何してんだ律!!」



グイッとシキの胸倉を掴んだ律に慌てて叫ぶ。いつもあんなにもシキに懐いて笑っていた律が、シキを鬼の形相で睨み付けているのだ。驚かないはずもない。


理史も唖然とした表情で、言葉を失っているようだった。俺の片腕に抱えられている陽葵も、ポカンと口を開けて静止している。



「あんたッ…何してたんだ!!ちゃんとアイツのこと守ってたのかよ!!何でこんな事になってんだ!!」



紫苑ちゃんが連れ去られたと電話越しで伝えた時は、冷静な声が返ってきたから油断していた。律がシキに抱くものと同じくらい、紫苑ちゃんに懐いて強い想いを抱いていることは、知っていたはずなのに。