「分かった、すぐ向かおう。もしかしたら紫苑ちゃん達もそこに…―――」
「……紫苑」
横からぬるっと話に割り込んできたシキ。明らかに様子がおかしい。瞳に光が宿っていないし、表情も抜け落ちている。声も低くどんよりしていて、最近のシキとは比べ物にならない。
紫苑ちゃんが居ないだけでここまで堕ちるのか…と半ば憐憫を含んだ目でシキを見る。今だって彼女の名前を聞いただけでほんの少し生気が戻った。
「紫苑…傷一つでもあったら…」
言いながらボキボキと骨を鳴らすシキ。青筋が浮かんだ拳からは血が流れていて、ここに来るまで大勢の敵を殴ってきたのが分かる。
ただでさえ苛立っているのだ。これで紫苑ちゃんがdeliriumの奴らに無体を働かれていたら、シキは我を失って暴れ回るに違いない。
deliriumを潰すどころか大量虐殺が始まってしまう可能性…何としてでも一刻も早く、紫苑ちゃんを見つけ出さなければ。
「だ、大丈夫だって。禅も居るわけだしさ?」
一度だけ禅の喧嘩をする姿を見たが、めちゃくちゃ強かった。
ただアイツは少しネガティブ思考なところがある。クソ強いくせに自分は弱いとか言っていた気が…。そんなわけあるかって声を大にして言いたいところだ。

