「…紫苑の手、小さいな」
「あぁ、体が小柄な方だからかな…」
目を瞬かせた獅貴が、そうだな…と意味深な目で私の体をじっと眺める。
「抱き締めたら腕の中に収まるしな、可愛い」
既に何度か抱き締められているため何も言わないが、そういう話は控えて欲しい。
普通に恥ずかしい。死にたい。
「紫苑は寒がりだったな、寒かったら言えよ?
すぐにギュッてしてあっためてやる」
「ハイ…」
だからそういうセリフを堂々と言わないでくれ…。
頬を染める私には気付いていないのか、獅貴は機嫌良さそうに私の手を引いて歩いている。
それにしても、あの一日だけでアパートの位置を覚えたんだろうか。獅貴が若干前を歩いているから道は分かってるんだろうけど。
迷いもなく進む獅貴に苦笑する。
私が拒否しても、いつでもアパートに押しかけられるってことか…。

