「そういえば、これからどうする?」
我に返って振り返ると、固く施錠されているであろう扉が目に入る。どうやってあそこから出ようかと考えていると、禅くんが私を床に優しく下ろして立ち上がった。
扉に向かう彼を追うと、禅くんはピタッと立ち止まる。片手を低い位置で上げる彼。止まれ、という意味だろうか。
「…どうかした?」
「…外が騒がしい」
ボソッと言葉を返した彼に、私はまた扉の方に視線を向けて、ついでに意識も集中させる。確かに外から怒号やら呻き声やら、やけに物騒な声が響いていた。何かあったのだろうか。
「獅貴たちが来てくれたとか…?」
「いや……」
それにしては早すぎる、と禅くんは言う。警戒するように眉を顰めた彼は、私を自分の背に隠してじっと扉を睨んだ。
暫くすると、向こうの騒がしさが消え失せる。さっきとは違う静寂が広がって、妙な緊張感に苛まれた。
「―――…ねぇ、まだ居るよね?」
男性にしては高い声。けれど扉を開けて入ってきた彼は、確かに男性の顔をしていた。
フードを片手で脱ぎ取りながら声を掛けてくる。そこから現れた顔はとても綺麗で、男性の面影を残しながらも中性的に整っていた。
「……?」
彼を見て抱いた、ふとした小さな既視感。