兄さんのお気に入りを助けるのは気が引けたが、この男が死んだら優しい兄さんはきっと悲しむだろう。酷く悲しんで、兄さんが涙してしまったらどうしよう。そんな顔をした兄さん見たくない。
deliriumの男達が居なくなってから、僕はピクリともしない下っ端の前にしゃがみこんだ。不本意だが、本当に不本意だが、応急処置だけは施しておく。
その時、下っ端が目を開けた。苦痛に歪む顔が此方を向いて、そして目が見開かれた。小さく「理史さんの…」という声が聞こえたような気がして、僕は思わずソイツの肩を揺らす。
どうして僕の顔を知っているんだと問い詰めたかったが、下っ端は再び目を閉じてしまった。思っていたより怪我が重症らしい。
「なんで、知ってんだよ…」
気を失ったソイツを止血しながら、僕は呟いた。
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