兄さんがたまに家に帰ってくる時は、緊張して話なんて出来なかった。deliriumと関わりがあることを隠さなければならなかったし、兄さんに隠し事をするなんて、それまでの僕じゃ考えられなかったからだ。
高校生になった兄さんは、やっぱりANARCHYの幹部として残るようだった。もしかしたら抜けてくれるかもって、期待したこともあったけど。
兄さんは一層僕に冷たくなって、少し悲しかった。大好きな兄さんに、表すらも取り繕ってもらえなくなる。それは拷問のようで、締め付けられる胸とその痛みに耐えることしか出来なかった。
けど兄さんの為なら、僕は何だって出来るよ。
deliriumの幹部候補とまで言われるほどになったし、それなりに強くなった。兄さんには百歩も千歩も及ばないだろうけど。
総長の日下嶽も、表面は絶対的なdeliriumのトップだが、皮を剥げばただの雑魚だ。刃物やら鉄パイプやら、格好のつかない武器に頼らなきゃ何も出来ない雑魚。
これなら楽勝だ。ANARCHYが手を出すまでもない。僕だけで内部から潰せるんじゃないか。そう余裕を持った時、想定外が起こった。
兄さんが目を掛けていたANARCHYの下っ端が、deliriumの馬鹿共にやられてしまったのだ。瀕死になる程ボロボロにされているソイツを、僕は死角からずっと見ていた。

