弟なのに、僕は兄さんの苦しみに気付けなかった。その事実を痛感すると、兄さんに会うなんてとても考えられなかった。見せる顔が無かった。
兄さんの行動を辿るように、僕は家に帰らず繁華街に入り浸るようになった。何度も通うのち、僕はある族の人間と出会った。刃物を振り回して相手を切り裂くソイツらは、僕に仲間にならないかと言ってきた。
彼らが名乗った族の名はdelirium。
兄さんが居ると言うANARCHYの、一番危険な敵らしい。それを聞いた僕はすぐにdeliriumへ入った。兄さんへの当て付けとか、そんな下らない理由の為じゃ無い。
ようやく兄さんに、僕が使える奴だって思わせられるかもしれない。兄さんの弟として認められるかもしれない。
兄さんが変わってしまった原因が僕なら、僕が兄さんを連れ戻さないと。優しい兄さんに、また会いたいから。
「待ってて、兄さん」
僕は変わるよ。兄さんの自慢の弟になるために。
そう決意したその日から、僕は学校が終わっても家に帰らなくなった。悲しそうな母さんの顔を見ることすらせず、一直線に繁華街へ向かう日々。
deliriumの所為で兄さんの大切な居場所が脅かされているのなら、僕がその元凶を内側から壊してやろう。全ては兄さんに認められるために。あの優しい兄さんに、もう一度会うために。

