「…いや、いいよ、悪いし…」


「気を遣うことは無い。俺が紫苑に会いたいだけだ」



素直か。



あまりにも素直且つ直球の答えに、この男は言葉を包んだり隠したりはしないかと妙な安堵が心を支配した。

こういうところは好感が持てる。


若干素直すぎる感じが否めないが。


「憂鬱な朝から紫苑の顔を見たい。
俺はそれだけで一日を過ごせる」


「なるほど…??」


神妙な面持ちで頷いたはいいものの、巡る頭の中は(?)で埋め尽くされていた。


ちょっと何言ってるか分からないな。


私の顔を見て一日が始まるなんて、罰ゲームとしか思えないが…。



「……それに、紫苑は俺のって知らしめねぇと」


「…?…何か言った?」



ボソッと言葉を吐き捨てた獅貴に聞き返すと、優しく微笑んだ彼が「なんでもない」と笑って手を差し出してきた。


無視すると一生このままかもしれないので、仕方なく手を握る。