拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



僕が中学校に上がる頃には、兄さんは完全に家に帰って来なくなった。稀に帰ってきたかと思うと、酷い怪我で倒れ込んで来たり。母さんはそんな兄さんを見て悲しそうにしていたが、決して口を出すことは無かった。


どうして兄さんに何も言わないの。そう聞いても、こういう時期があるのと言うばかり。見守ってあげればいいのよと、母さんは微笑む。


兄さんは怪我をしているのに。本当に兄さんは今幸せなの?とても楽しそうで、清々した顔をしているのは確かだけど、これが本当に、兄さんの幸せだって言うの…?


兄さんは本当に、どうしちゃったんだろう。やっぱり僕の所為?僕が邪魔だから?だから兄さんはいつまで経っても帰って来ないの。



「…僕、友達の家に泊まってくる」




試しに僕は、兄さんと同じことをしようと考えた。母さんは慌てたように僕を止めてきたけど、どうしてそんなことをするんだ。兄さんは止めないくせに。


もはや自分が何に苛立っているのか分からなかった。どうしてと詰め寄ると、母さんは僕は駄目なのだと言う。


僕の"それ"は違うと。意地になってしまっているのだと。分かったような口を聞かないで欲しかった。



「知らないよ、もう決めたんだ」



僕は母さんの手を振り払って家を出た。帰らない兄さんでさえ、母さんに手荒い真似はしたことが無いということに、それから随分後に気が付いた。