そうじゃないんだ。だって僕は、混乱してる。


文面からでも如実に分かる、兄さんが変わってしまったという事実。母さんは、誰にでもこういう時期があるのだと微笑んでいたが、時期って、なんだよ。理解が出来ない。


『夕飯作れなくてごめん』、この言葉には、いつもの兄さんがいる。けれど決定的に、全てがもう違うのだ。兄さんじゃないのだ。


作れなくてごめんって、そう思うなら帰って来てよ。帰って来て、いつもみたいに、僕のご飯も、母さんのご飯も作ってよ。


自分が我儘な子供になってしまったような感覚に目を見開く。そして思い知った。僕は子供だ。我儘で、兄さんが居ないと何にも出来ない、手のかかる子供。



「…嫌になったの、兄さん」




僕が嫌になったの。だから帰って来ないの。母さんは誰にでもこういう時期があるのだと言っていたが、そんなはずない。優しい兄さんがそんなことになるわけ無い。


きっと嫌になったんだ。ただでさえ母子家庭で、母さんには二人の息子が居て、苦労させてしまっている。けど兄さんは手がかからない。むしろ家庭の助けになっている。


家事だって、僕の相手だって。何でもする兄さんと違って、僕は無力だ。そして、誰が見ても、どう考えても、邪魔な存在だろう。