月日が経つにつれて、兄さんは日に日におかしくなっていった。毎日必ず帰ってきて、僕と仕事の遅い母さんの為に夕飯を作る。そんな兄さんが、ある日の夜、帰らなかったのだ。


部活や生徒会が長引いているのかもしれない。そう思った。僕が知る中で兄さんが部活に入っているなんて話は聞いたことがないが、実は知らない間に入っていたのかもしれない。


だから遅くても、きっと夕飯までには帰ってくる。僕はそう思って、初めて一人でご飯を作った。たまに兄さんや母さんと一緒に料理をすることはあったが、一人は初めてだった。



「…"理史"、まだ帰って来ないのね」



珍しく、母さんが兄さんより先に帰って来る。兄さんの自室に明かりが灯っていないことに気が付いて、憂いを帯びたため息を吐いた。


仕方なく、僕と母さんは二人で夕飯を食べた。一つぽつんと空いた椅子が、とても寂しげに見えた。


そこに置いた料理だけが、いつしか冷めきってしまった。



「母さん!兄さんからメールきた!」



夜中になっても兄さんは帰って来ない。そろそろ焦り始めた母さんを横目に、僕は静かに鳴った携帯を開く。そこには兄さんからのメールが届いていた。



慌てて母さんを呼んで、僕は硬い表情で画面を見る。そこに書いてあったのは、望んでいた言葉では無かった。