大きく目を見開く彼を見て、私は言うのだ。彼の後悔を解消して、思い詰める彼に、伝える為に。



「結局会えたし、約束は守ってくれたでしょ?それに、禅くんの存在があの頃の私を守ってくれてたのも事実。はい、これでもう全部終わり、いいよね?」



にこっと笑って、あっけらかんと言い放つ。呆然としていた禅くんはやがて口角を上げて、可笑しそうに笑い出した。



「っはは…そうだな、約束だって、破ってねぇし」



憑き物が落ちたかのように、彼は大口を開けて笑顔を浮かべる。安心したような、ほっと息を吐くような、そんな笑い方だ。


また会えて良かったと、彼は言う。だって、と続いた言葉に、私も釣られて微笑んだ。




「…あのままずっと会えなかったら、俺は一生後悔してたよ。紫苑のこと、守れなかったって」




今度は守れて良かった。そう静かに呟く彼に、何故か涙が出そうになる。


幼い頃から脳裏に、心に住み着いていた不安と後悔が、霧みたいに消えていく。そんな感覚が、きっと私と彼、二人の間に、同時にあった。