彼が殴られたのはどうやら後頭部らしい。額から後頭部に掛けて巻かれた包帯を見るに、恐らく血も既に止まっている。
彼が自分でやったにしては、巻き方があまりに綺麗すぎる気もするが…。私の視線の意味を察したのか、禅くんは一度逡巡した素振りを見せて頷いた。
「…知らねぇ奴が一人、入って来てよ。お前がまだ気絶してた時。そんで怪我の手当てして、またどっか行っちまったんだ」
deliriumの誰か・・・にしては何かおかしい。ANARCHYを極端に嫌う彼らが、わざわざ禅くんの怪我の手当てなんかするだろうか。
「…そっ、か。でも良かった」
理由は分からないが、その人には感謝しないといけないな。たとえ何か別の思惑があったとしても、禅くんを助けてくれたのは事実だ。
ここに入って来れたということは、やっぱりdeliriumの人…なんだろう。もしかしたら私たちの味方かもしれない。
「…まぁ、信じ過ぎるのも危ねぇけどな」
考え込む私を見て、呆れ顔の禅くんが静かに呟く。忠告、だろうか。私だって、助けてくれたからと言って無条件に信用なんてしない。
ただ、見る限り禅くんにしてくれたと言う手当てはとても丁寧なものだ。包帯の巻き方も綺麗だし、血も綺麗に拭き取られている。およそ敵に施すような処置には見えない。

