相手を理解するっていうのは、自分を安心させる為の行為なのだ。理解するのもされるのも、居場所を得るのと同義だから。
「…倉崎くんは、そう思うんだね。でもお兄さんはお兄さんだよ。お兄さんは物凄く強くて、でもそれは君の強さとは別のもの」
「…………」
偉そうな口ぶりだな、と自分でも思う。伝えたいことが上手く伝えられないのが口惜しい。私の精一杯の言葉が、一端でも彼に届いてくれたらいいのだが。
頭上から落ちてくるため息。それは呆れでも苛立ちでも無くて、本当に何物でもない気がした。体の底から吐き出したかったものを、ただ従うままに零したかのように。そう思えた。
「…けど、ダセぇ守り方で悪い。全然強くなかった」
「―――・・・」
あぁそうか、これは…。胸に湧き上がった確かな感情と記憶は、その数秒の言葉だけ失わせていく。彼の吐いた言葉が、ずっしりと心に雪崩るのだ。
彼がここまで悔しそうに、辛そうに、私に頭を下げる意味がようやく分かった。
「っ…そんなことない」
「……?」
震えた私の声に、彼は不思議そうに顔を覗き込んでくる。そしてすぐに目を見開いた。それはきっと、私の瞼から頬を伝って、涙で濡れていたからだろう。たった一筋のものだったが。
一筋、涙を流しながら微笑む。彼は呆然とした顔で、そんな私を見つめていた。

