「…別にやましい事考えてねぇからな。お前冷え性だろ、ここクソ寒ぃから仕方なくだ。我慢しろ」



私の視線に何か感じ取ったのか、倉崎くんは不本意そうに眉を顰めてそう言う。なんだ血迷ったわけでは無いのか…と安心した後、冷え性だってこと彼に言ったことあるっけ?と首を傾げる。


獅貴は知ってるはずだから、獅貴から聞いたのかな、と納得して。もう一度倉崎くんを見上げた。



「そっか、ありがとう。もう大丈夫だよ」



にこやかにそう言って倉崎くんの膝の上から降りようとすると、何故か私を抱き締める腕の力が強まる。


「うん…?」と間の抜けた声を出して彼に視線を向けると、倉崎くんは感情の読めない目でキッパリ言い切った。



「クソ寒ぃつったろ。倒れられたら面倒だ、このまま大人しくしてろ」



優しいのか強引なのか分からない…。一応気を遣ってくれてるのだろうか。有難いがそれより羞恥心が勝るんだよなぁ、と思いながらも素直に頷く。


抱え直されると、今の体勢を思い知らされるようで恥ずかしい。膝の上に横抱きにされた状態で、ふと足首に付けたアンクレットが目に入った。


よく見ると一部分が少し錆れている。初めてこれを付けてからほぼ十年程経っているから、そろそろ紐が切れてしまうかもしれない。