これはマズい、話が噛み合っていない。
大体獅貴と帰る約束なんてしてたっけ…?
「…、待ってたなら、ごめん…。
退屈じゃなかった?先に帰っても良かったのに…」
「紫苑と帰りたかったから」
「…。…あ、そう」
なんだよ「あ、そう」って。もっと愛想良く返せよ。なんて一人芝居を心の中で繰り広げる。
そういえば獅貴は私に懐いてるんだったな、なんでか知らんけど。
「送る。紫苑は世界一可愛いから、男に襲われるかもしれない」
「心配してくれてありがとう。とりあえず私は君が心配だよ、眼科に行っておいで」
薄々気付いていたが、彼の目は節穴らしい。
本当に心配だと目を揺らすと、獅貴はきょとんとしながら微笑んだ。
「…?よく分からないが、紫苑に心配されるのは気分が良い。もっと心配しろ」
嬉しそうで何より。