体が緩やかに、暖かく、揺蕩うような感覚で目を覚ました。酷く心地好くて、本当はまだ眠っていたかったけれど、何かに呼ばれたような気がして。



「…、……?」



視界が開ける。初めに真っ白な世界に支配されて、それが光だということにぼんやり気付く。目がその光に慣れた頃、光景がゆっくりと鮮明化していった。


最初に目に映ったのは、無機質で寂れた建物の中。廃れた倉庫の一室のような、狭い空間。高い位置にあるあの小さな窓から、僅かに日の光が洩れている。



「―――…紫苑」



やけに優しい声。それはとても近くで聞こえた。とても近くの…頭上から。



「………え…?」



見上げると視界にドアップで映る、強面ながらも整った美形。金色の髪がキラキラ輝いて、少し眩しい。私は数秒、停止した。


ピタリと固まって、何秒経ったろうか。目を大きくゆっくり見開きながら、状況を理解した瞬間「は!?」と大きく声を上げた。



「く、倉崎くんっ…!?なん…え、近っ…?」


「落ち着け」



これが落ち着いてられるか!と大きく反論したいところだが、それではいつまで経ってもこの状況が理解出来ないままなので落ち着くことにする。ひとつ深呼吸をすると、背中に回された彼の手が優しく上下した。


つまり、撫でられている。彼の腕が体に巻きついて、そして互いの体も密着している。