通話を終了させると、今まで来た方向に視線を向ける。何人潰しながら来たか分からないが、見る限りでざっと十数人くらいだろうか。


これから来る涼也達の手間も減らせたはずだ。だがそんなことより、総長の手間を減らせたことの方が嬉しい。これが終わったら褒められるだろうか。良くやったって、それだけ言ってくれれば良いのだが。



「………」



そこまで考えて、けれど総長のことよりも紫苑のことが頭から離れない自分に首を傾げる。いつだって最優先は総長だったはずなのに、今は紫苑への心配で脳が埋まりそうだ。


絆されたか、なんて漠然と思った。



「……紫苑」



名前を呼んでみると、心臓をギュッと掴まれるような、おかしな痛みが走る。これは何だと思いながらも、その感情の正体が理解出来ない。


まぁいいか、と無理やり納得させて、振り返る。路地はまだまだ先まで続いていて、きっと今から休まる時間はそうそう来ないだろう。


とっとと終わらせて紫苑に会いたい、なんて。無意識にそんなことを考える自分には気が付かなかった。