拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



最後の言葉は見逃せない。琥太が怪我を負って、紫苑さん達が巻き込まれているかもしれない。今一番危惧すべき相手であるdelirium。奴らの溜まり場がある繁華街に、陽葵が一人で居るというのか。


思わず割って入って問い掛けるが、焦りに支配されているのか陽葵はそれに答えない。泣きそうな…いや、事実泣いているのだろう。そんな弱々しい声で言う。



『どうしよう…僕のせいだ…僕がちゃんとしてなかったから…僕が見つけないと…絶対アイツらが二人に何かしたんだ…っ!』




憎々しげに叫ぶ陽葵。感情的になった陽葵は危険だ。彼はいつも感情の起伏が薄い分、それが爆発した時が一番危ない。


湧き上がった激情を抑え込めないのが、陽葵の欠点だった。



「陽葵。そこから動くな、俺が今行く」



何度か"陽葵"と総長が呼び掛ける。三度目のそれにようやく我に返ったのか、携帯越しに陽葵が息を呑む音が聞こえた。


風の音がさっきよりも小さくなった。恐らく今までずっと動いていて、たった今立ち止まったのだろう。彼の切れた息も、やがて穏やかに収まる。



「大丈夫だ、紫苑も禅も必ず見つける。全員でだ。もちろんお前も一緒に。分かったら大人しく待っていろ」



矢継ぎ早に言う割に、その声は焦燥も何も混じっていない。どこまで行っても、総長の表面は冷静だった。