しーくん…?と間の抜けたような声。次の瞬間縋るような声は総長に向けられた。陽葵らしくない切羽詰まった話し方で、通話する向こうから風の音が聞こえてくる。外に居るのだろうか。
『しーくんっ!しーくん戻ってきて!!しーちゃんが居なくなっちゃったの!ぜんくんもいないのっ…!』
目を見開く涼也さんを横目に、俺も言葉を失った。禅さんはともかく、紫苑さんが何も言わずに居なくなるのはおかしい。
それに陽葵のこの焦りよう。何かの確信を得る出来事があったはずだ。
「…陽葵、落ち着け。紫苑達に何があったか、お前は把握しているのか?」
総長は特に動揺することもなく、平静な声で問い掛ける。動揺することなく…というのは語弊があるかもしれない。きっとその動揺を、彼は上手く隠しているだけなのだ。
握り締めて爪が刺さっている総長の拳が、僅かに震えている。
『わかんないっ、わかんないけど…っ…廊下に血がいっぱい流れてた…!ぜんくんがいつも行ってる教室の近く…!!』
陽葵の言う教室とは、禅さんがサボりに使っている空き教室のことだろうか。あそこ周辺は滅多に人が通らない。それこそ毎日行くのは禅さんくらいだろう。
そんな場所の廊下に、大量の血…?
『電話掛けてもつながらない!しーちゃんにも…!だから僕っ、いま繁華街にいる…―――』
「待って下さい、繁華街に居るって…?」

