「…理史」
「っ…総長」
病院の中庭に出て携帯を取り出す。涼也さんに連絡しといた方がいいかと考え込んでいると、背後から低く無機質な声で呼び掛けられた。
ビクッと肩を揺らして振り返ると、案の定そこには総長が立っていた。相変わらず無表情で何を考えているか分からない、至って冷静な視線を俺に向けてくる。
「涼也さんは何処に…?」
「―――ここに居るよーん」
総長の背中から顔を出した涼也さんに呆れ混じりのため息を零す。この人は何だってこの緊張した空気でそんなにハイテンションなんだ…。
満面の笑みの涼也さんは、総長の肩を軽くポンッと叩きながら此方に近付いてくる。少し苦味を帯びた笑みに崩した彼に、はっと我に返った。この人も、冷静という訳では無いのか。
「……琥太は、どうだった?」
問い掛けてくる声は、ほんの少しだが沈んでいる。精一杯の本調子を演じているようだが、心配やら不安やらが隠し切れていない。俺はふわりと微笑んで頷いた。
「さっき目を覚ましました。後遺症もありませんし、数日大人しくしていれば大丈夫でしょう」
ほっと息を吐いた涼也さん。視界の端で、総長が安心したように頬を緩ませたのは気の所為だろうか。彼が他人の心配をするとは思えない、紫苑さんが倒れたわけじゃあるまいし。

