「…悪いヤツじゃないッス。これは絶対、言えるッス」



それだけ言って、琥太は両目を固く閉じる。これ以上は言えない、そう語るように。その声には迷いが無くて、確信が込められていたから、俺は何も言わずに椅子から立ち上がった。


琥太がそう言うなら、そうなんだろう。コイツは馬鹿で無鉄砲だが、人を見る目は突出してある。だから琥太が『悪いヤツじゃない』というなら、きっとその人は俺たちの味方だ。


絶対に探し出して、礼を言わないとな、なんて。顔も知らない誰かを思い浮かべて、早くその人に会いたくなった。



「…これから、抗争が起こります」


「……そう…ッスよね」



途切れ途切れに言葉を返す琥太は、少し気まずそうだ。自分がその抗争の引き金を引いてしまったとでも思っているのだろうか。



「言っときますけど、貴方の所為じゃありませんよ。抗争は何れ起きていましたし、起きていなくても、いつか起こさなければならないものでしたから」



deliriumはどうせ必ず、潰さなければならない族だった。それが今回だっただけのこと。それにANARCHYの奴らも中々やる気だ。琥太が怪我したからとかそれ以前に、喧嘩したい奴らが楽しそうにしてるだけだが。


血の気盛んで少し不安だ。その元気さに果たして着いていけるだろうか。野蛮な下っ端が多くて困る。