最後に見えたのは、きっと血だ。赤くて不快な手触りで、そしてそれは、彼の頭から顎までを辿るように滴っていた。


目の前が真っ暗になって、背後から伸びてきた手を避けることが出来なかった。その手には小さな布が握られていて、それが口元に押し付けられた時、視界は本当に沈んで真っ暗になった。








『ぜんくんは私のヒーローだよ』








―――脳裏で囁いたのは、誰だったろうか。