「…っ」
そうだ、たかが貞操の一つや二つ、差し出してやろうじゃないか。花の女子高生、"そういう"経験のある子の方が多いと思うし、なんなら処…の私は珍しい。
日下くんは所作が王子様というか貴族っぽい。そして完全な偏見だが女に困らないような容姿。両脇に美女侍らせてそうな顔してる。
これはもう頼み込んで日下くんに抱かれるか。一番優しそうだしそれが最善かな…なんて考える私。恐怖と混乱でパニクっているからなのだが、この時の私は自分の判断がどれほどとんでもないことか理解していなかった。
ていうか体差し出すって具体的に何するんだ?と首を傾げたと同時に、後ろから手首をグイッと引っ張られる。
「───…っへ?」
「おいこら馬鹿女」
馬鹿女ぁ!?と文句を言う為に振り返ったら、そこにあったのは怒り顔の強面だった。正直怖い。この顔に慣れてなかったら失神してた。
そして馬鹿女って結局なんだ。なんなんだ突然。失礼だぞ。
「何考えてるか知らねぇけど、これだけ言っとくぞ。
馬鹿が馬鹿なこと考え出したらもう終わりだ、いいな?」
とりあえず貶されてるってのは分かった。でも馬鹿は聞き捨てならない。誰が馬鹿だ、こっちはめちゃくちゃ真剣に考えてる。自分の分も君の分も、だ。

