「そ、そこを何とか、穏便に出来ないかなって…」
「…おい、お前何言ってんだ…」
背後から呆れた声が聞こえるが無視だ。ていうか君は呆れる権利ないからな、大体幹部なのに喧嘩出来ないとんでも詐欺してた君の所為でしょ。頼もしい…キュン…とか心の中でしてた私に謝れ。
ここは何とか。ぶっちゃけ言っちゃうとこっちはもう雑魚二人いるよの状況だからな…。わざわざ血を流さなくてもいいんじゃないか。汚れるし痛いしで、喧嘩は悪いことしかないよ?
その点穏便に済ませれば皆ハッピー。怪我する人も居ないし血の後処理もする必要は無し。どっちがメリットかなんて丸わかりだ。
ここまでのこと、賢そうな君なら分かるよね。
日下く────
「でも俺…ANARCHY嫌いだしぃ…」
無理っぽい。
長髪を指でくるくるする日下くんに、思わず白目を剥いて倒れそうになった。彼らが生粋の不良だってこと忘れてた。血が汚いとか最早そこの概念では無いのか。
喧嘩をすること、人を痛み付けることこそが、彼らにとってそもそものメリットになってしまう。彼らはその行動を快楽に置き換えることが出来るからだ。
それなら何を言っても無駄な気がしてきた。ここはもう大人しく私が身を差し出して、せめて倉崎くんだけは逃がすことが出来れば…。

