拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



「っあの、ちょっと一旦落ち着かない…?」


「おい馬鹿!離れんな!!」



半ば反射的に倉崎くんの体を押しのけ振り返る。焦った声を上げて私の手を掴んだ彼を一瞥して、すぐに日下くんを真っ直ぐ見据えた。


倉崎くんには悪いが、もう君に頼ることは出来ない。むしろ何か危なっかしいから下がっていて欲しい。


喧嘩出来ないくせに煽るだけ煽りまくってたってことでしょ?どんな自信を持ってしてそこまで強気で出られたんだよ。私はその態度に驚きを隠し切れないよ。



「えと、その…日下くんの目的は何?ここには何しに来たの?ちゃんと…答えて欲しいな」



応えられる範囲なら応えよう。暴力沙汰はここでは避けたい。倉崎くんへの一方的な集団リンチとか黙って見てられるわけないし。廊下も横幅が狭いから逃げ道が無い。つまり私と倉崎くんは現状詰んでる。


相手の下手に出て様子を窺うのが賢い選択と見た。これからの計画性も何も無しに煽って殺られるとか、それはもうただの馬鹿だ。


さぁ来い。どんな答えが来ても私は諦めな────




「うーんなんだろ、倉崎を殺す、かなぁ?」




駄目だこれ!!諦めるしかねぇ!!


そういう目的はもうどうしようも無いんよ。あ、じゃあ倉崎くんあげますよ、とはならないし。そんな薄情な真似は流石の私も出来ない。