拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



「………」


って理解出来るわけあるかー!!とノリツッコミをしてみる(心の中)。表面は神妙な真顔で貫いているが、脳内は大荒れだ。かなり混乱しているらしい、いつものテンションじゃない。


とりあえずこの場をどうにかしなければ…と思考を回すが、そう上手い案が浮かぶはずも無く。こういう時華麗に敵を撃退してみたいものだが、私は運動神経が最悪なのだ。挑んだところでって話。



「…紫苑」


「…ん?」



珍しく名前で呼んでくる倉崎くんに反応が遅れた。腕の中から顔を上げて彼を見上げると、瞳を揺らして冷や汗を流す倉崎くんが目に入る。


どうしたの、と問う前に、気まずそうに視線を逸らして彼が言った。日下くんや凶器を持った先輩達には聞こえないくらいの小声で。



「……すげえ言いづらいんだけどよ…
…俺、喧嘩できねぇんだ…」


「………え?」



ポカン…と開く口。倉崎くんは照れ臭そうに口元を引き攣らせているが、言っとくけど照れている暇は無い。かなり衝撃の事実だったよ今の言葉。


体を強ばらせていたのはこれだけの数を相手に出来るかという緊張だと思っていたが、どうやら違っていたらしい。


状況と事実から察するに、たぶんどうすることも出来ない現状に絶望してただけっぽい。誰だよ倉崎くんはめちゃくちゃ強いって言ったの。駄目っぽいぞこれ…!