警戒が緩いとか、獅貴がどうとか。倉崎くんの顔に徐々に浮かぶ焦りの色も気になる。じりじりと後退する倉崎くんに困惑しながらも、私も一歩後ろに下がった。
そこではっとしたように体を震わせた倉崎くん。それと同時に背後から聞こえてくる、複数の足音。
「ってめぇ…!!」
憎々しげな倉崎くんの声に、いよいよ何かがおかしいと振り返る。視線の先には見慣れない男子生徒達。靴の色から見て、恐らく先輩だ。
その顔に浮かぶ意味深な笑みと、彼らが手に持つ鉄パイプやらナイフやらの、やけに物騒な凶器。何となく、事態の状況を理解してきた。
「日下くんは…deliriumの人なの?」
現れた彼らが倉崎くんを見る目には、粘着質な敵対心が宿っている。その上刃物まで向けているとなると、答えは一つだ。
「ははっ、この状況でも冷静なんだ…やっぱり面白い子だね紫苑ちゃん。芹崎は君のそういうところに惚れたのかな」
獅貴の名前を出さないで欲しい。恐怖より羞恥が勝つ。あの告白を思い出して、ついでに自分の想いを改めて確認させられて恥ずかしいのだ。
ぶっちゃけ全然冷静じゃないが、以前から感情を顔に出すのが少し苦手だったのが幸いしたのかもしれない。心の中は羞恥やら不安やら恐怖やらで埋まってしまっているが、気付かれてはいないようだ。

