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「後からチビが怒りそうだな」


「た、確かに…」



空き教室へ向かう廊下を二人並んで歩く。今日は倉崎くんが居るので、迷うことなく正規ルートで行けるだろう。安心して進んでいると、倉崎くんが呆れ気味に話し始めた。


起こさないように…と思って無視してしまったが、よく考えたら陽葵が一人で教室に居るなんて初めて見た。彼は寂しがり屋の甘えん坊だから、滅多に一人にはならないはずなのに。


ANARCHYの情報が彼らの間でやり取りされているなら、陽葵はシキ達が来ないことに気が付いていたはず。それでもわざわざ教室に行ったってことは。



「お前のこと待ってたんじゃねぇの」


「だよね…」



かと言って授業中の教室に割り込んで「サボろうぜ!」と声高に言うのはちょっと、アレだ。常識的に考えて駄目だろう。


一応学校に居ることはメールしておこう…と軽く携帯を弄ってまた仕舞う。



「だったら視聴覚室に行った方が良かったかな」



いや、と首を振る倉崎くん。



「あそこは…今日は駄目だ」



躊躇いがちに言う彼に「…そっか」とだけ返す。聞き返されるのを拒否している雰囲気だ。私が知らなくてもいいことなんだろう。


少しの寂しさを抱きながら、それでもANARCHYのことは知っているから前よりは不安が小さい。