かくかくしかじかーとめちゃくちゃ適当な感じでメールを済ませると、数秒の間を置いて返信が来る。
『ちょっと何言ってるか分かりません。今から向かいます』
うーん説明下手だったか…。がっくり肩を落とす俺と、冷静な文面の理史。琥太が重症、と補足のメールを送ると、今度は数秒も経たずに返ってきた。
『それを先に言え』
いつも敬語の理史。俺の説明の少なさにご乱心のようだ。確かによく考えたら一番大事なところ省いてたな、と反省する。メールは確認してから送ろうと心に決めた。
『ごめん』の文章に既読がつかないことから、今この瞬間こちらに向かってきているのだろう。爆速でバイクを走らせる理史の姿が目に浮かぶ。
理史はANARCHYの幹部の中で、最も仲間思いな人間だ。シキは"仲間"という概念に興味を持たないし、陽葵は気に入った人間としか関わらない。禅は…正直よく分からない。
「……ん?」
振動する携帯。開くと案の定、理史からのメールだ。
『琥太の具合は』
やっぱり優しい奴だな、と苦笑して『呼び掛けても目を覚まさない』と簡単に答える。今度は既読がついたが、返信は来ない。それよりも急ぐことを選んだのだろう。
これから来る理史のことを考える。リスクを冒してでも救急車を呼んだ方が良かったかと、らしくもなく後悔した。

