拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



シキは俺の言葉に立ち止まって息を吐く。振り向いた先に倒れている琥太を見下ろして、感情の読めない瞳を細めた。



「……」



そのまま今度は逆方向に踵を返して、路地裏を抜けるために歩き出す。次はちゃんと出口へ向かったシキに、疲労と安堵でため息をついた。



「…おーい、起きれるか?」



琥太は未だに目を覚まさない。一応話し掛けてみるが、起きる気配はまるで無い。見た目で既に分かることだが、かなり重症のようだ。


…deliriumの奴らも容赦が無い。殴れた跡や蹴られた跡の他に切り傷もあることから、凶器も使われたのだろう。



「はぁ…どうすっかな…」



シキのこと呼び止めれば良かった。よく考えたら俺だけで琥太を運べるわけない。かと言って救急車なんて呼んだら俺らのことがdeliriumの奴らにバレてしまう。


理史でも呼ぶか。アイツ面倒見良いし、琥太のことも気に入ってるみたいだし。保護者ってことで理史に任せよう。うん、そうしよう。


頷いて携帯を取りだし場所を送信する。既読の早い理史からはすぐに返信が届いて、そこに書かれているのは『は?』の二文字。そういえば何故繁華街に居るのかを説明し忘れていた。



「…うわー」



案の定すぐに一文ずつ送られてくる質問の嵐。何でそんな所に居るんだ、シキは居るのか、ていうか今どんな状況??


混乱しているアイツの姿が目に浮かぶ。早く説明してやらないと理史の奴禿げそうだな。