「違うよ…普通にちゃんと聞いてちゃんと理解したから。獅貴のこと、というか、ANARCHYを怖がってるわけじゃない」



だから他人行儀になんてならないでね、と釘を刺す。勘違いでせっかくの友情を失うのは避けたい。ただでさえ私には友達が少ないのだ。


恐らく、と言うよりかは確実に、今までで一番仲の深まった友達は彼らだけなのだから。



「…。…やっぱり、そう言うよな」


「え…?」



思っていた反応とは違って首を傾げる。ボソッとした声だったから良く聞こえなかったが、どこか寂しそうで、それでいて嬉しそうな声だ。まるで私の答えを、予め知っていたかのような、悟った目。


「何でもねぇ」と吐き出される声は普段通りだ。面倒くさそうで気怠げな、倉崎くんって感じの声。



「…まぁ、アイツらのことはどうでもいいんだけどよ」



ため息混じりにそう語る彼。若干空を見上げるような仕草をするから、それに釣られて視線を追う。そこにはただ、いつも通りの面白みの無い空が広がるだけだ。


虹なんかが出てたら盛り上がってたんだけどな、この状況…なんて勝手に肩を落として。雨なんか降っていないから、そんなことは有り得ないが。


けど、気になったのだ。倉崎くんは確かに、何かを追うような瞳で視線を動かしたから。あまりに切実そうな色を宿していたから、気になった。