「……はよ」
「……な、なんで…?」
いつもの様に弁当を作り終えて、時計を見る。もやしを詰め込んだその箱に無理やり蓋を被せながら見た時計の針は、既に六時を回っていた。
今日はいつもより寝坊してしまって、獅貴の早い迎えに慣れていたので酷く焦った。ところがどうだろう、この時間になっても彼は現れず。
代わりに常識的な時間にやって来たのは、眉間に皺を寄せた倉崎くんだった。何だか少し眠そうだ。
「あの、獅貴、は…?」
これはどういう状況だと胸に問い掛けて、胸より当人に聞いた方が早いなと判断し問う。倉崎くんは面倒くさそうに頭を掻いて私を流し見た。
「あー…、なんつーか、急用?アイツ来れねぇらしいから、代わりに俺が寄越された」
「そう、なんだ。なんかごめんね…」
ほっと息を吐くと同時に、言いようのない寂しさが心を支配する。嬉しいのか悲しいのかどっちなんだ…。
でも良かった。正直今日の朝会ったら何言おうって昨夜から考えていたところだ。挙動不審になる自信があったし、獅貴から何を言われるかも怖かった。昨日彼から逃げ帰ったようなものだし。
「帰る時も俺とだから」
「…へ?」
「…そもそも学校に来ねぇんだよ、アイツ」
息を呑む。何か本当に急用があって、偶然それが今日だったってだけかもしれない。けど昨夜の出来事がアレだった為に、変に勘ぐってしまう。