「信じてないだろう、俺のこと。好きだって、何度も言ったけど、紫苑は本気にしてない。冗談だと思ってる」
「………」
冗談だと思ってる…?違う、獅貴の言葉に嘘が無いことくらい、簡単に分かる。声音や表情、真っ直ぐな瞳。全てが物語っているから。
それでも獅貴はそう言うのだ。獅貴が咎めているのは、不安に思っているのは、私の器量の脆弱さだろう。受け止めたと自分で思っていても、事実はどうだろうか。
「見てれば、聞いてれば分かる。俺は紫苑のことなら、絶対に何も、全部、見落としたりしない。だから分かる」
逃げたりなんかしないのに、獅貴は恐れるように腕を震わせて、それでもその腕の中に私を閉じ込める。精一杯のその仕草には、獅貴の本音の全てが詰まっているはずなのに。
そこまで知って、それでもどうして私は、ここまで空っぽの心を保てるんだろう。冷静でいられるんだろう。
赤面した体外を取り繕って、焦った表情を作り出して、高鳴る鼓動は知らないフリをして。
違和感の正体は、私自身だ。
ドクン…と鳴る鼓動。それは今までの得体の知れない高鳴りではなくて、我に返ったときの不安や絶望みたいな、そんなもの。
「…。…違う」
気付くと背中に回された腕は、遠慮の無い力強さじゃなく、包み込むような穏やかさに変化していた。

