「あの時から、好きだったんだ」
「………」
「ずっと、好きで好きで。初めて学校で会えた時、本当に嬉しかった」
「……、」
反応に困るって、こういうことか。いつも無表情で感情の起伏の薄い人間が、こんなにも頬を緩めて、心底嬉しそうに語っている。
高鳴る鼓動の意味は、何なのだろうか。
「会えて良かった。紫苑が、本当に好きだ」
「っ…」
ぐっと鳴る喉を抑えて、反射的に俯く。そしてそのあと、後悔した。
上を向いた方が良かった。熱い目頭を何とか堪えるには、下を向いては駄目だったのに。やり切れない衝動をどこへ逃がせばいい。滲む視界は、一体何なのか。
苦しいのだ。何故か胸が、軋むように苦しい。獅貴の言葉の意味が、本当の意味で理解出来ない。やっぱり私は、私も、どこかおかしいのだろうか。
「わ、わたし、は…―――」
先に続く言葉なんか見えていないのに、口は勝手に動く。何を言おうとしているのか、自分でも分からない。
獅貴が縋るような色を瞳に浮かべるのを見て、はっと我に返った。
「―――はい、そこまで」
「…!?」
「………」
カタンッ、とテーブルに何かが置かれた音。音の方へ視線を向けると、コーヒーを淹れ直した鴻上さんが苦笑して此方を窺っていた。

