思わず獅貴の口を両手で抑えてしまった。ふに、とした感触に喉が鳴る。ヒッ…と零れた怯んだ声に気付かれてないといいが。
「…しおん…?」
「わっ…!」
手のひらにくっ付いた唇がやわやわと動く。何だか変な気持ちだ、鼓動がバクバクとうるさい。慌てて手を離すと、獅貴はこくりと首を傾げた。
唇に指を添えて、数秒固まる獅貴。やがて嬉しそうに微笑んだ。いや待て、なんで嬉しそうなんだ。
「紫苑が…俺に触れてくれた」
「変な言い方しないで!」
どうしてこの男は一々誤解を招く言い方をするんだ。そして一々えろ…色っぽいし。"そういう"勘違いをしそうな言葉選びをするし。
「き、嫌ってない…むしろ何も言ってくれなかったことに怒ってるんだから、反省して」
頬を僅かに膨らませて言った私に、獅貴は一度目を見開いて、直後優しげに笑う。瞳に込められた懐かしむような色を不思議に思った途端、獅貴は言う。
柔らかく、口角を上げて。
「……やっぱり、紫苑は紫苑だな」
どういうことだと問う前に、獅貴が自分から話し始めた。私の手に添えた大きな手に、僅かに力が篭もる。
「初めて会った時も、紫苑は俺を怖がらなかった」
「……、」
そういえば、そんなこともあったか。もう随分前のことのように感じる。

