「…何か言うこと、あるよね?」
「………」
獅貴の顔色が悪い。まるであれだ、悪さをして怒られる子供のような表情だ。何故だか私が罪悪感を抱いてしまう現象。必死に気を引き締めて心を鬼にする。
視界の端で、鴻上さんが静かに席を立ったのが見えた。カップを手にしているところを見るに、コーヒーを淹れに行ったのだろう。空気の読める人は久しぶりなので少し混乱してしまった。
黙り込む獅貴を隣に促す。長椅子に二人で並んで腰掛けると、やがて決心がついたのか、獅貴が顔を上げた。
「紫苑、その…悪かった」
「何が」と聞くと、獅貴は寂しそうに顔を歪める。意図せず突き放すような声音になってしまったことに、少し冷たすぎただろうかと後悔した。
膝に乗せた手に、大きく無骨な手が被せられる。逃がさない為のような仕草を、私は大人しく受け入れた。
「…紫苑が好きなんだ、だから嫌われたくなくて…」
「っ…!!」
反射的に顔を逸らす。急激に赤く染まった頬には気付かれていないはずだ。本当に、不意打ちでそういうことを言うのはやめて欲しい。
本気で肩を落として落ち込んでいるのがまた憎らしい。実は一番天然なのって獅貴なんじゃないか。
「俺を嫌わないでくれ…好きなんだ、好きだから、嫌われたくなくて…怖がられるのも、嫌で―――」
「分かった!!分かったからちょっと黙って!!」

