奴らのことだ。ANARCHYを潰す為に紫苑ちゃんを使おうだとか、その辺のことを考えていることは容易に想像がつく。


獅貴くんも気付いているだろう。幾ら紫苑ちゃんにベタ惚れで周囲に目が行かないと言っても、彼は馬鹿な訳じゃない。


既に気付いて、deliriumの思惑も返り討ちにし、消し去ろうと動いているはず。彼らは俺らの代とは違って賢いし、強いから。


紫苑ちゃんはけれど、気付いていないだろう。ANARCHYのことすらも良く知らないようだったのだ。deliriumについて詳しく知っている訳が無い。



だが彼女は知るべきだ。



ANARCHYの彼らを受け入れてくれるなら。獅貴くんの根底にある闇も、取り除こうとしてくれているのなら。


紫苑ちゃんは、彼らの傍に居る為に知るべきことを知らなすぎる。それこそ、無知な弱みでしかない。


ANARCHYの彼らも詳しく教えてやればいいのにと思うが、それも出来ないのだろう。理史くんやら涼也くんは兎も角、陽葵くんや獅貴くんは紫苑ちゃんに嫌われることを酷く恐れる。


大方、族の人間だとバレて紫苑ちゃんに逃げられると思っているのだろうが、全くの思い違いだ。なんなら彼女は彼らが族であることを初めてから知っていた。


いつも一緒に過ごして、彼女の心根を理解している彼らなら、紫苑ちゃんがそんな理由で離れる子ではないことを分かっているはずなのに、だ。



けれど、仕方ないのかもしれない。思いが強ければ強いほど、見る目が変わる恐怖は大きくなるものだから。