対立していた訳じゃない。むしろ獅貴くんはどちらかと言うと争い事には興味が無くて、一方的に売られる喧嘩に辟易しているようだった。


先に手を出したのは此方だ。血の気が多い幹部の一人と下っ端の奴らが、独断で彼に喧嘩を売った。そしてそれを見事に返り討ちにされたと。滑稽な話だ。


ネオン街で族相手で喧嘩をし、ボロボロになった獅貴くんを俺が拾ったのがそもそもの始まりだった。偶然拾い癖で拾った年下の子供が、偶然凄く強かったというだけの話。


一応居場所を作った俺に、一応感謝しているのかしていないのか。獅貴くんはANARCHYに喧嘩を売ることも無く、仕返しをすることも無く、何となくその場の流れでANARCHYの幹部にまでのし上がった。




獅貴くんがまだ、中学一年の頃だ。




最年少で幹部に上がったこともあり、獅貴くんは好奇や嫉妬の目に晒されることになった。流石にまだ早かったかと後悔したが、彼は大して何も思っていないようだった。


ただ、選ばれた現実を淡々と受け止めているように見えた。


初めて会った時から、感情の起伏が薄い人間だとは思っていたが。ここまで本音の読めない人間は初めてだ。当時は酷く苦労した。



嫌なら嫌と言っていい。本当にANARCHYに居たいのか。怪我はしていないのか。



毎日のように話しかけて、獅貴くんは頷くことしかしなかった。いや、頷くだけマシだったのかもしれない。関心の無い相手には、相槌すら打たない奴だったから。