ANARCHYに入り、少しはまともな状態に戻ったと思う。けれど俺は脆くて、精々"少し"現実を受け入れた程度。


胸にぽっかりと空いた穴を抱えながら、高校二年の春、俺はANARCHYの総長に選ばれた。相変わらず喧嘩は強くなかったが、抗争の頻度も鈍化してきた今、それはあまり関係の無いことだった。


正直言うと、俺が総長に選ばれた理由はよく分からない。俺より強い奴はANARCHYの中には掃く程居たし、態々俺を選ぶ理由はないと思った。


総長がまだ現役だった頃、その理由を聞いた事がある。




『だってお前、拾い癖あるじゃん。
たまにとんでもねぇモン拾ってくるからなぁ』




お前の強運に免じて、選んだってわけ。笑いながら言う総長は、相変わらずろくでもないことしか考えていなかった。だが言ってることはまぁまぁ正しかったが。


拾い癖、とまでは言わない。俺自身弱かったから、路地裏なんかで倒れてるやつを見ると、自分に重ねてしまうのだ。だからつい、助けたいと思ってしまう。



総長の言う『強運』



それが最も発揮された出来事。そしてもう一つ、総長が言っていた『とんでもねぇモン』とは、疑う余地なく、彼のことだろう。




―――芹崎獅貴




俺が拾った中で、一番『とんでもねぇモン』と言える人間だ。俺より…いや、俺は弱いから置いといて。当時ANARCHY1と呼ばれた程の強さを持つ奴が、拳一つでやられてしまった。