彼らも、私のことを知らないのだろうけど。


「………」


黙り込んだ私に何を思ったのか、鴻上さんはじっと此方を見つめていた視線を外してテーブルの上に逸らす。そして微かに、微笑んだ。



「…ANARCHYのこと、知って欲しいです。
貴女の為にも、彼らの為にも」



それ程重大なものなのだろうか、ANARCHYとは。


今まで深く考えるきっかけは無かったけれど、獅貴たちにとっても大事なことなのなら、知らなければならないと思った。


そして、たった今抱いた、この違和感の正体についても。



「…鴻上さんは、どうしてそこまでANARCHYのことを私に?ANARCHYは貴方にも関係があるんですか?」



敵わないな…と苦笑する彼。数秒逡巡して、直後彼は悪戯っぽく笑った。




「―――…俺も、ANARCHYの人間だったんですよ」




「……っは?」




驚いて口を挟む間も無く、彼は素早く話し始めた。ANARCHYについて、そして獅貴たちについての『昔話』を。