フルフルと首を横に振ると、鴻上さんは複雑そうに表情を歪めて息を吐く。取り敢えずBARで話しましょうと促す彼に大人しく頷いた。
周囲を見渡してはっとしたが、ここからBARへの距離はかなり近い。鴻上さんが私を偶然見つけて助けてくれたのも、そのお陰ということもあるのだろう。
「この人たちは…?」
未だピクリとも動かない彼らを見下ろし問い掛けると、鴻上さんはあたかも今気付いたかのように「あぁ…」と振り返る。
興味無さげな緩慢なその動きに、また違和感を覚えた。
「まぁ、放っておけば勝手に消えるでしょう」
またもや良い笑顔だ。キラッキラの表情のところ申し訳ないが、さっきから鴻上さんへの印象が段々と変わりつつある。
最早心優しい聖人の面影はどこにも無い。
「そう、ですね…」
はは…と苦く微笑んで、大人しく彼の後を着いていくことにした。
――――――――――――
――――――
―――

