体育祭も終わり、漸く落ち着いた日々が続いてきた頃。
私は今、バイト終わりの帰路に着いていた。例の年齢詐称でやっていたバイトじゃない。ちゃんとしたまともな所だ。以前のバイト先は店長のセクハラが激しくなってきていたので速攻辞めた。
ただそこはネオン街の近くで、治安が悪く帰る時は物騒だ。何せ終わる頃には深夜間近なので、酔っ払いや不良との遭遇率が高かった。
ちなみに獅貴にはバイトのことを伝えていない。言ったら絶対乗り込んでくるし。
今日も今日とて、物騒な路地も危険な通りも通らず、遠回りしてアパートへ向かっていた。いた、のだが…。
「―――君可愛いね!この後時間ある?」
「―――俺らと遊ばなーい?」
The・チャラ男の看板を掲げたような男が二人、さっきから絡んでくるのだ。赤髪と青髪、対照的で面白いが、黄色が居たらもっと面白かった。信号みたいでシュールなのに。
「………はぁ」
どう答えればいいのか分からず、曖昧に首を傾げるだけに留める。私みたいな凡人女をナンパするなんて悪趣味だなぁ…と不意に考え、空を見て納得した。
暗いから顔がよく見えないのだ、だから私を美少女だと勘違いしてしまったのだろう。
「あの、すみません…もう帰るので…」
なんとか進もうとするが、進行方向は男たちに塞がれて通れない。なんだお前ら、壁かっつーの。