「暑いから疲れたか?少し休んだ方がいい」
言いながら律がペットボトルの蓋を開けて私に差し出す。私が熱中症を起こしたとでも思っているらしい。結局手元に戻ってきた水に苦笑する。
律の言葉を聞いて、怖い顔をしていた獅貴が焦ったように駆け寄ってきた。
「紫苑、具合悪いのか?大丈夫か…?」
余りにも不安そうな顔をするので、母性本能が擽られて手を伸ばす。頭をポン、と軽く撫でて触り心地の良い髪を梳くと、獅貴は柔らかく目を細めた。
「…つーか、エアコン付いてなくね?」
「「………え?」」
弱った私を見て怪訝に首を傾げた倉崎くんが、ふと何かに気が付いたように声を上げる。興味無さげな獅貴と律以外の全員の声が見事に被った。
「…ほんとだ」
エアコンの傍に近付いて、両手を万歳の形に上げた陽葵が呟く。それをボーッと見ていた律が何かを思い出したのか「あ」と固まる。
「そういえば、サボり防止でエアコン全部止めてるって言ってたな」
開会式で言ってた、と呆気なく言い放った律。直後視聴覚室に「はあぁぁあ!?!?」という絶叫が響き渡った。