「良いのか?ありがとう紫苑」



ふにゃあ、と笑った律に私も笑みを返していると、周囲の様子がおかしいことに気が付いた。さっきまで騒がしかった室内が異様に静かだ。


未星くんがギョッとしたように目を見張っているし、陽葵と涼くんはぽかんと首を傾げている。倉崎くんはよく分からない表情だ。複雑そうな表情。


獅貴は鬼の形相だ、とても怖い。



「あの…お二人共、いつの間にそこまで仲良く…?」



未星くんの問いに納得して頷いた。確かに傍から見ればこの光景はカオスだろう。


律は獅貴にしか懐いていなかったから、私、それも女にベッタリくっ付いている姿が異様に映ったのかもしれない。



「あぁ…それは…―――」


「俺と紫苑の秘密だ、邪魔するな」



答えようとすると、それより先に律が言葉を遮った。冷たく凍てついた、氷のような声で。


思わずビクッと揺らした私の肩を見下ろして、律は慌てたように目を見開いて口を噤んだ。ペットボトルを片手にあたふたする姿は正直少し面白い。



「し、紫苑、悪い、怖がらせたか?ごめんな?」



こういうところも獅貴そっくりだな、と不意に。反応が本当に獅貴に似ていて既視感が凄まじい。そんなことを考えて、何でも全て獅貴と比べている自分に気が付き困惑が過ぎった。


どうしてこんなにも、獅貴のことを考えてしまうのか。



「紫苑?」


「…ぁ、うん、なに?」



心配そうに呼びかけられてはっとする。困ったように微笑んだ律が、私を近くの椅子に誘導して座らせた。