「紫苑!!褒めろ!!リレー1位獲ったんだ!!」
ガバッと抱き着いてきた律を、半ば遠い目で受け止める。初めに抱いた印象は間違っていなかったようだ、彼はやはり獅貴に似ている。
スキンシップが激しいところとか、人の言うこと聞かないところとか。
「おい律…てめぇ…」
「あ、総長、おはようございます!!」
キラッキラの笑顔で獅貴に挨拶する律。相変わらず獅貴への忠誠心と憧れは持ち合わせているようだが、前より態度が軽くなった。
なんと言うか、雲の上の存在から、手の届く存在に接するような、そんな変化。
「リレーも借り物競争も50メートル走も全部1位獲ったんだぜ!!」
「わ、わぁ…たくさん種目出たんだね…」
怒涛のスケジュールじゃないか。まさか全部の種目に出るなんて言わないよね?
笑顔で褒めるはずが、少し苦味のこもった微笑になってしまった。ちょっと軽くドン引きである。彼はどうやら勝負事への執念が凄まじいらしい。
「おめでとう律。疲れたでしょ、水飲む?」
せめてものご褒美…とまでは行かないが、持っていた水を差し出す。私が律と話している間に未星くんが皆に飲み物を配ってくれていた。本当に出来る男だ。
この水は私のものなのだが、まぁ仕方ない。ていうか何もしてないし。水はたくさん走って頑張った律が飲むべきだろう。