拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「………」


「…なにこれ、どういう状況?」



隣に立つ未星くんが深刻そうに目を瞑って眉間に皺を寄せている。まるでこの光景を見たくないと主張しているようだ。


かくいう私も同じ気持ちである。私たちが飲み物を買いに行ったこの短時間に一体何が起こっていたのか。



「紫苑、おかえり」


「遅ぇぞお前ら!!早くコイツら止めてくれ!!」



あっ、と私と未星くんに気が付いたのか、さっきと同じ位置に座り込んでいる獅貴が顔を上げて声を掛けてくる。それに釣られたように視線を向けてきた倉崎くんが切実そうに叫んだ。


ピシッと彼が指差した先には、瀕死で倒れていたはずの陽葵。長机の前に仁王立ちして何やら満足そうに、むふーと微笑んでいる。


そしてさっきから室内に充満する、食欲を誘うこの良い香りは…。



「めっちゃ美味そう!!マリナイス!!」


「…じゅんちゃんのBARに突撃して作ってもらった。
ご飯、いっぱい」



いつも眠そうに目を擦って鈍い動きをしている陽葵だが、実は行動力は人並み以上にある。


やると決めたら止められない。むしろ止めようと思った時には既に動いており、なんなら目的は達成した後なのだ。



その陽葵が、また何かやらかしたらしい。



「やけに大きなリュック持ってきてるなと思ったら…これが入ってたんですね…」



疲れ気味に「はぁ…」と溜め息を吐いたのは、未だ眉間に皺を寄せたままの未星くんだ。今日は苦労人枠のはずの涼くんもボケに回っている為、彼だけに重荷が降り注いでいる。


とても不憫だ。頑張れとしか言いようが無い。