怪訝そうに見つめてくる流川くん。やっぱりまだ、信じてくれそうに無い。けど言葉で訂正は出来たから、良しとしよう。
誤解されたことを確実に解いて、万人に分かってもらおうだなんて、思ってないから。
「…それより流川くんは、私のこと嫌いなのに、どうして手当てしてくれるの?それに、なんで足首怪我してるって…」
私の問い掛けに、流川くんは気まずげに視線を伏せた。その先にあった腫れた足首を見て、無言で包帯を巻いていく。
やや逡巡した素振りを見せて、やがて見上げられた瞳の奥は、迷いながらも決意が込められていた。
「お前、右足引き摺ってたろ。それに俺、怪我してる奴、ほっとけないんだ…ずっと孤児院で育てられて」
「………」
「…毒親ってやつだよ、虐待されて、挙句捨てられた。施設ん中で最年長になってからは、ヤンチャしてるガキどもの面倒見させられて…」
再び視線は包帯を巻いたそこに向けられる。瞳に映された慈愛のような色は、きっと私に向けたものでは無いのだろう。少し、遠いから。
「…孤児院」
彼の言葉に驚いた。どうやら私たちは、同じ境遇のようだったから。
「わたし、も」
「……?」
思わず零した言葉に、流川くんは僅かに此方を見る。相変わらずその手は私の足首に添えられていて、今は薄手のタオルに包んだ保冷剤をそっと押し当てているところだ。
冷たい感触が心地いい。
「私も、孤児院で暮らしてた。一時期、引き取り手が見つからなくて」
目を見開いた流川くんに苦笑する。これだけじゃ何を言っているか分からないか、と笑って、そういえば最近にも、この話をしたかもなとふと思う。
そうだ、数日前に、未星くんにも少し話した。

